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ストーンズ・イン・エグザイル~「メイン・ストリートのならずもの」の真実


 チリの鉱山落盤事故の33人の全員救出、素晴らしいですね。2カ月もの間、助かるかどうか分からない中みんなで協力して生き延びたということは、まさに前向きなラテン系気質の賜物と簡単に片づけるのは失礼かもしれません。しかし、日本人ではこうは行かなかったかも知れない。誰かが統率はしたかもしれないがノイローゼになる人、暴れる人などが現れるのではないでしょうか。
 いずれにしても、これは本当に偉業と呼べるようなことだと思うのですが、これに対する世界の反応はとても商業主義で笑ってしまいますね。「33人」という映画の製作がすぐに決まったそうで。しかも「チームメンバーすべてがリーダーだった」なんて発言もあったものだから、間違いなく組織開発とかリーダーシップ開発の業者さん達がこれを引用していろんなビジネスを考えるんでしょうね。「ドラッカーが落盤事故にあったら・・」なんて本もいいかもしれない。
 さて、チームという点では、私はむしろ「メイン・ストリートのならず者」のローリング・ストーンズに注目します。このアルバム、確か72年の作品で、イギリスの高い税金から逃れようとフランス南部に移住したストーンズのメンバーらがキース・リチャ―ズの家の地下室でセッションを続けて録音されたもので、発売当時は2枚組の中の曲調が散漫だと酷評されたものの、今ではストーンズの最高傑作と呼ばれているのです。実際、とてもブルースっぽくて、バンドが演奏を楽しんでいる、という感じで私も大好きです。
 このセッションはミック・ジャガーではなく、主にキースがリードしていたようです。ミックは新婚で忙しかったということもあるのですが、キースが昼起きると仲間を集めて気の向くままに演奏を朝まで続ける、という日々が続き、9カ月で9曲という極めて効率の悪いセッションとなりました。しかし、その内容はその前後のストーンスでは出来なかったような素晴らしいものでした。
 この傑作を生んだ背景には、麻薬問題などで世間から厳しい目でみられ、さらには税金問題で母国を離れて、ある意味もうこだわりはない、という心境の中でミュージシャン達が自分たちの赴くままに演奏をしたということが大きいでしょう。ミックが仕切って、ヒット曲を何曲か入れて、アルバム全体の構成はこうして、という製作方法でも素晴らしい作品は生まれるのですが、「メイン・ストリート」はまったく別物です。
 これは今コーチング業界で注目されているキース・リチャ―ズのこだわらないポジティブさによるところが多いのではないでしょか。キースはメンバーの中で唯一、一度レコーディングした曲を何度も聞く人だったようです。ミックはもう次のことを考えているので録音してしまった曲には興味がない。キースは本当に音楽が好きで、バンドマンなのでしょうね。当時ヤク中ではあったものの。
 そんなキースが南仏のリラックスしたムードの中で主導したセッションなのだから、それぞれのミュージシャンが水を得た魚のように演奏して、今の管理化された音楽業界では生み出せないような作品が出来上がったのです。
 チリの33人もすごいけど、キースが導いたチーム・ジーニアスも歴史的な事件ではないかと私は思うのです。今度キースによる自伝が出版されました。日本語訳はまだのようですが、ポジティブ感情がネガティブな感情・行動と共存しながら高い成果を上げるという人生の一つのモデルとして読む必要があると思います。

谷川俊太郎のインタビュー


 先日NHKで、今日本で一番成功している詩人、谷川俊太郎のインタビューを見ました。
 それ程好きな詩人という訳でもないのですが、78歳で未だに日本の詩壇を背負っている彼の発言はとても興味深いものでした。 
 知らなかったのですが、谷川さんは3回結婚し3回離婚しているのですね。司会者にそれは詩作にとって良かったのか、と問われ、「そんなこと言わせるんですか?」と苦笑いしながらも、そんな体験が自分そのものであって、それがなければ今の自分は違ったものだっただろう、と言っていました。何故結婚は上手くいかなかったかと聞かれると、「詩人は詩言語という美辞麗句と共に生きていて、どうしても生活の中でも日常の言葉とそれが一緒になってしまう。」ととても深いことを言っていました。
 もともと谷川さんは、何かどうしても自分で訴えたいものがあって詩人になった訳ではなく、詩が書けることが分かりそしてその依頼が出版社から来るから生活のために書き続けてきたとのことでした。「つまりずっと資本主義の中で詩を書いてきた」とまで言っていました。
 非常に正直な発言ですね。その他にも自分は本当に生涯恵まれていて、何も思い残すことはない、死もある意味楽しみだ、なんて言っていました。

 詩や音楽の意義については、「意味がないこと」だと言っています。「意味」というものは人間が最近作り出したもので、それまで何百億年も宇宙には「意味」なんてなかった。「意味」を考えると視野が狭くなり、競争になる。確かに詩言語の美しさは意味を介入させないものですよね。「意味」を重視するメタ・コーチングを学んだ者としては、とても考えさせられる意見です。

 彼は78歳のお爺さんなのに、身体がとても引き締まっています。何かスポーツをしているのか、と聞かれ「とんでもない、スポーツなんて身体に悪いでしょ。すこし呼吸法をしているだけです。」なんて言っていましたが、これは以前ミック・ジャガーが小林克也に毎日何キロ走っているのか、と聞かれた時の答えとほぼ同じです。どちらも本気で答えてなんていないのです。
 そういえば、谷川さんとミック・ジャガーの間には何か共通点がありますね。離婚歴も多いし、二人とも資本主義あっての大成功です。かたや悪魔と言われ、かたや心温まる言葉の魔術師と言われる。どちらも資本主義のなかでの仮面なのですね。しかし、それを商業的だと言って嘲笑することは出来ないでしょう。お客や読者あっての芸術活動、実際に歴史に残るのは自分の魂の震えに自己満足しているだけのアーティストではなく、ちゃんとマーケティングしているプロフェッショナルなのでしょうね。

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