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2012-12

クリスマス・イブの夢(萩原一平)


 僕が昔通ったアリゾナのビジネススクール。僕はドイツ人のクナー先生と面談の約束があったのだが、1分遅れでオフィスの受付についた。
 5つほどある銀行みたいな受け付けはどれも人が並んでいて、僕は1人しか並んでいない列に並んだ。自分の番が来て、クナー先生との面談だと伝えると「ここはブレックファーストとランチの予約の列ですよ」と言われる。別の列に並び直して同じことを言うと「ここもブレックファーストとランチの列」だと言われる。「じゃあ、どこに並べばいいんだ?」と聞くと、「今日はブレックファーストとランチの予約しか受け付けていない」とのこと。
 もう約束の時間から30分も過ぎている。しかし、僕はどうしてもレポートのことで伝えなければならないことがあるのだ。周りを見回すとブレックファーストとランチを我先にと予約している人で一杯だ。
 やりきれなくなった僕はもう一度時計に目をやり、叫んだ。
「フア~ック!」
 するとスターウォーズのR2-D2みたいなロボットがどこからともなく近づいてきた。そして人工的な音声で僕に言った。
「あなたは今自分が何を言ったか分かっていますか?」
「ああ、分かっているよ。悪い言葉だ。でも、しかたがないだろ、この状況だぜ。クナー先生に会えないんだよ」
「事情は分かりませんが、あなたは規則に反しました。残念ながら退学です」
 僕は事の重大さに気付きはしたが、何も出来ないと分かっていたので言い返さなかった。すると横で見ていた小太りの白人の女の子が近づいてきた。
「私横にいてこの人が叫んだのを聞いていたけれど、少しも不愉快な思いはしなかったわよ。腹が立つ気持ちも分かるし。勘弁してあげたらXXXX」
 そのロボットのことを何とかと呼んでいたが、僕にはそれが聞き取れなかった。
「不愉快でなかったのはよかったけれど、規則は規則です。退学してもらいます」
 女の子はやれやれ、といった感じで肩をつぼめ、去って行った。
 ロボットは相変わらず無機質な音声で言った。
「就学辞退の申請書をすぐにプリントアウト出来ますが、要りますか?」
 僕はもらっとこうかな、とも考えたがやっぱり止めた。
「要らないよ。どうせ学校から退学の通知が来るんだろ。こっちが辞めたいわけじゃないんだからそれを待つよ」
 ロボットは「了解しました」と言いながら私の正面でシャッター音をさせ、そのまま静かに去って行った。

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