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2011-08

これから働き方はどう変わるのか―すべての人々が「社会起業家」となる時代


ソフィアバンク代表の田坂広志氏の著作です。全体的に若者向けに軽いタッチ(やたらと段落を変えるブログ風の文章)で書かれていますが、いくつか印象に残った文があったので紹介致します。

・「はた・らく」とは、世の中の多くの人が「楽」になるという意味がある。つまり働くということは「会社」のためになる仕事をするというより「社会」のためになる仕事をすることである。「会社」も「社会」に貢献する商品やサービスを提供してはじめて存続できるのである。
・就職関係の雑誌などでは、若者の理想の仕事として「高年収の職種」や「待遇の良い企業」などがトップに挙げられ、若者は自己中心的でキャリアアップ志向だ、などと言われるが、誰でも「世の中の役に立ちたい」という思いや「社会に貢献したい」という気持ちを持っている。「仕事を通じていかに社会貢献や社会変革に取り組むか、ということを真剣に考えている人も少なくない。
・ヘーゲルがその弁証法哲学の中で、「事物の相互浸透」ということを述べている。それは「対立物の闘争による相互浸透」とも呼ばれる法則で、まったく逆の性質を持った対立するもの同士が、闘争のプロセスを経て、互いに「相互浸透」を起こし、互いに似通ってくるという法則の事。例えば資本主義と社会主義。日本型経営とアメリカ型経営。
・「人間は自分を癒すことができないと、目の前の世界を癒したくなる」この警句は、社会起業家を目指す我々が一度深く考えて見るべき警句である。自分自身の人間としての成長の課題から「逃避」するために「社会貢献」や「社会変革」を語っているのではないか。「自分を変えられない人間は決して社会を変えられない」
・本当に問われているのは、「いかにして勝つか」「いかにして成功するか」ではなく、「全力を尽くしてなお、敗北や失敗に直面した時、その時、自分を支え得る思想を持っているか」である。
・「社会起業家」としての働き方への変革とは、「社会貢献」や「社会変革」の志を持ち、「現在の事業の変革」や「新しい事業の創造」を通じて、「良き社会」を実現しようと考え、働くことである。もはや指導者の時代は終わったのである。

なでしこ力


 ワールドカップで「なでしこジャパン」を優勝に導いた佐々木監督の著作です。
 監督のいろいろな場面でのコメントの中に彼のコーチング力が垣間見られていましたが、本書を読んで、やっぱり、と思ったコメントを少しだけ紹介します。
 選手にも、家族にも信頼され、とてもバランスの取れた人のようにお見受けします。

・澤選手はどうして、ゲームの中で2手3手先の展開を読めるのか?彼女は状況を見てポジショニングを修正することが得意で、常に周囲よりも早く動き出すことが出来る。この嗅覚は攻撃の場面だけでなく、相手ボールをカットしたり、こぼれ球を拾ったりといった守備の場面でも活躍した。これを本人に聞いたところその答えは下の通り。
「攻撃したいから、相手のボールを奪いたい。どうすれば上手くインターセプトできるかは考えていないけれど、攻撃するためにはまずボールを取らなくちゃ、とは常に思っている」
・試合前にユニフォームの上着を軽くたたんで並べておく選手たちをみてスコットランドの監督は驚いた。「さすがですよ。礼儀正しさ。きめの細かい心配り。道具への愛情も感じます」
・指導者がやるべきことは、まず選手の長所を見抜き、それを認めているんだというメッセージを本人に伝えることだ。プレー中のミスは、叱られたから減るものではない。大好きなサッカーを「もっと上手くなりたい」と思って本人が努力するからこそ、ミスは減るのだ。
・僕は、選手が積極的に自分らしさを発揮しようとしたプレーならば、極力叱らない。また、なでしこジャパンのキャンプに呼んだ時だけでなく、普段の国内リーグを視察した時から「おまえのこういうところは武器なんだぞ」と選手に直接、声を掛けている。「なでしこジャパンでその良さを存分に披露したい」と思えるような雰囲気を、監督である僕自身が常に振りまくようにしている。
・評価があいまいな上司のもとでは、部下もなかなか達成感を得ることができず、戸惑ってしまう。だから僕は、監督として選手のプレーを評価する際、まず前提となる規準を自分のなかで明確にする。そのうえで、試合の勝ち負けに左右されず、いいところはいい、ダメなところはダメ、と客観的に評価するように努めている。

利他のすすめ:チョーク工場で学んだ幸せに生きる18の知恵


 本書は「日本でいちばん大切にしたい会社」の中のエピソードで多くの人に感動を与えた日本理化学工業(株)の大山会長による作品です。
 最近では若者によるボランティアが話題になり、相変わらず自分探しに時間を割く人も多いようですが、大山会長の78年に及ぶ人生の知恵からすると、そんな悠長で贅沢なことをするより、とにかく今何でもいいから人のためになる仕事をするべきだ、と感じます。
 
大山会長が「知的障害を持っている社員が2人いるが、彼らは施設にいれば楽なのにどうして工場で働こうとするのか?」という質問をある住職にしたときの、以下の答えが大山さんの人生を変え、また日本理化学工業をやがて製造ラインのすべてを知的障害者にまかせる企業へと導いたのです。

「人間の幸せは、ものやお金ではありません。
人間の究極の幸せは次の四つです。
人に愛されること、
人にほめられること、
人の役に立つこと、
そして、人から必要とされること。
愛されること以外の三つの幸せは、働くことによって得られます。
障害を持つ人たちが働こうとするのは、本当の幸せを求める人間の証なのです。」

いい言葉ですね。
その他にも大山さんは本書のなかで含蓄のある言葉をたくさん書き残しています。

・ 神様は個性を作ったのではありません。人の役に立つことを幸せだと思う人間をつくったのです。そして、その幸せを追い求めて努力をすれば、おのずから「個性」は生み出されるのです。
・ もしかしたら、マズローの五段階欲求説の「生理的欲求」と「安全の欲求」は動物脳が司り、「所属と愛の欲求」「承認の欲求」「自己実現の欲求」は人間脳が司るのかもしれない。自己実現に向かう根本原理は「利他の心」にほかならないのではないでしょうか。
・ 「経済」とは「経世済民」の略である。その意味は「国を治め、民の苦しみを救うこと」です。
・ 「この世の最大の不幸は、貧しさでも病気でもありません。自分が誰からも必要とされないと感じることです」(マザー・テレサ)
・ 福沢諭吉は「学問のすすめ」の中で「怨望(えんぼう)」という言葉を挙げている。その意味は「陰湿で進取がなく、他と比して自らを不満に思い、自分を省みず他人を頼み、自分を高めずに他人を下ろそうとする」ことだそうです。知的障害者は犯罪を起こすんじゃないか、などと偏見に満ちたことを言うのはまさに「怨望」ではないか?

 もう読んだ方も多いと思いますが、あっという間に読めてしまうけれど後味のとてもよい一冊です。是非ご一読を。

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