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2011-05

エンゲージメントとは?


エンゲージメントの意味

 私は(社員)エンゲージメントという言葉をもう何年も使い続けていますが、未だにその上手い訳語は見つかっていません。「愛着」「絆」「自己実現」「深い関与」など、いろいろありますが、私は「組織に対して強い愛着を持ち、仕事に対して熱意を持っていること」という訳語を良く使います。
 しかし、これでいいのか、とずっと考え続けていました。私の論説記事「不況時代に求められる「意味」のあるメタ・エンゲージメント」のなかでも通常使われる「エンゲージメント」という言葉は企業内の論理に基づいていて、仕事の「意味」「社会的意義」についてあまり重きを置いていないと問題提起したのですが、私の疑問はフランス哲学に於いてすでに解決されていました。
 フランス実存主義の用語で「アンガ-ジュマン」というものがあります。これは英語のエンゲージメントをフランス語読みしたもので、状況に自らかかわることにより、歴史を意味づける自由な主体として生きることを指し、ジャンーポール・サルトルやアルベール・カミュなどの思想ではさらに政治的・社会的参加、態度決定の意味を持ちます。つまり、政治、社会への主体的な関与意識というものがその意味合いに含まれています。
 実存主義というとちょっと大げさなような気もしますが、会社の中だけのエンゲージメントではなく、社会、政治、歴史を意識して、本当に意味のあると思えることに主体的に貢献しようという気持ちが「アンガ-ジュマン」なのです。
 結局は「エンゲージメント」も「アンガ-ジュマン」も英語かフランス語かの違いだけです。そう考えると、「エンゲージメント」の訳語として「参画意識」「深い関与意識」「主体的貢献」「主体的社会参加」「公私の成長に貢献すること」「非中立的態度」「強い社会的意志」などの訳語案も浮上してきます。私には、「愛着」とか「絆」という個人的な言葉よりも「主体的貢献」あるいは単に「貢献意識」の方が社会貢献のニュアンスも含まれるし、しっくりくるようです。
 日本のビジネスパーソンはハード・ワーカーだとよく言われてきました。しかし、ギャラップ社などの調査でエンゲージメント度合いは先進国の中でもかなり低くなっています。これは終身雇用制度、高度成長の影響もあって、個人として主体的に貢献、自己成長しなくてもやってこられたからなのですが、その結果、社会的・歴史的に無責任な企業経営や社会倫理に背く活動を生んでしまったことも事実だと思います。これからの日本のビジネスパーソンには、会社の中での「エンゲージメント」を高めることに加えて、社会を見据えた「アンガ-ジュマン」を強く持つことが益々必要となるのではないでしょうか。

ストレングス・ファインダーの資質カテゴリー


 最近、ストレングス・ファインダーの34資質のカテゴリーについて聞かれることがありましたので、ここで私の見解を書かせて頂きます。
 確かに日経出版社刊「これが答えだ」にストレングス・ファインダーの34の資質を分ける「かかわりあう才能」「影響を与える才能」「努力する才能」「考える才能」という5つのカテゴリーが紹介されています。
 2001年に「さあ才能に目覚めよう」が出版され、2003年に「これが答えだ」が出たのですが、2007年ころかな、開発元のギャラップ社はコンサルタントに対してこのカテゴリーを使わないようにお達しを出しました。当時ギャラップ社コンサルタントだった私としてはその理由はとても納得のいくものでした。
 まず、第一にこのカテゴリー分けはとても恣意的で、納得できないものが多いという点があります。例えば、「競争性」という才能(資質)は「影響を与える才能」のカテゴリーに入っているのですが、「人より勝ちたい、比べられたい」という「かかわり合い」に強く影響する部分や「何としても勝つために努力する」という明らかに「努力する才能」に入る面も持っています。このいかにも「えんや」で分けたようなカテゴリーで人は納得するでしょうか?何でもいいから手っとり早く答えが欲しいような自己啓発マニアであればOKかも知れませんが、真面目に成果を出そうとしているビジネス・パーソンはきっと納得しないでしょう。そんな方々と「競争性」はどこで「責任感」はどこ?その理由は?といった議論をすることは全く意味が無いのです。研修でこんな議論が炎上してしまったら、全く無駄な時間を過ごしてしまうことになります。
そんな「個々人のいいところに気付きそれを活かして成果を出す」という本論と関係のないところで無駄な議論をしないためにもこのカテゴリー分けはやめよう、というのがギャラップ社の考えでした。日常的にビジネス・パーソンと仕事をしている私としては嬉しい決断でした。
 もう一つ大事な点として、ストレングス・ファインダーの良さはその「タイプ分け」ではない点にあります。「あなたはXXタイプね」などとタイプ分けをするのは、多くのアセスメントが目指していることで、使いやすい面もあるしそれ自体に異論はありません。しかし大切なのは、34の資質という、組み合わせると無限にも近いパターンで人の才能を説明するところが、「人はみんなそれぞれ違って、どの才能にも活かす価値がある」というストレングス本来の理論の素晴らしいところなのです。タイプ分けしてしまうと話が分かりやすいし(本質的なところに疑問を持たない人にとっては)、その場でのインパクトは強いというのは分かりますが、それは本来のストレングス・ファインダー(その他VIA-ISなどの強みアセスメントも同じです)の目指すところではありません。
一時的な納得感を求めている方が「やっぱり私には『影響を与える才能』が足りないわあ!」なんて納得して帰るのが目的であれば、もともとタイプ分けを目指して作られたアセスメントの方がよっぽど使い勝手もいいし信憑性もあると思うのです。
繰り返しになりますが、ストレングス・ファインダーは「タイプ分け」が目的ではないし、この4つのカテゴリーはギャラップ社も撤回した、あまり意味のあるものではないのです。
手っ取り早く答えが出ないのは歯がゆいかもしれませんが、自分の才能を理解するというのは、占い師に占ってもらうのとは違って結構覚悟と深い内省が必要なものだと思います。特に企業で真剣に「強みを活かす組織づくり」を進められている担当者の方々には、この点をよくご留意して頂きたいと思います。
(強みを活かした組織作り、チームビルディングなどに関するお問い合わせはユーダイモニア マネジメント(株)に何なりとお尋ねください。)
www.eudaimonia-mgt.com

裁かれる三菱自動車


 本書はいわゆる三菱自動車のリコール隠し事件で、日本では珍しい「制裁的慰謝料」の鑑定書が裁判所に提出されるまでのストーリーです。その後の最高裁の結果は本書の出版以後に行われていますが、結論的には制裁的慰謝料は日本にはなじまないということで認められなかったものの、事件当時の社長を含め7人の幹部が有罪判決を受け逮捕されました。その後、三菱自動車が歴代の社長を告訴することにもなり、まさに一流ブランドが地に堕ちた事件でした。
 この「制裁的慰謝料」ですが、アメリカではよく適用されるもので、トヨタなどもその対象となりました。企業がクレーム隠しなどを行う背景には、「費用便益分析」をすることによって、たとえ犠牲者数人に法律で定められている慰謝料を払ったとしてもリコールを何十万台に対して行うよりもずっと格安だから隠しておこう、という企業判断があります。それに対し「そうは問屋がおろさないぜ」と制裁を加えるのです。そうしないと企業側はまた同じくその功利主義から同じような非倫理的な活動を続けてしまうからです。
 三菱自動車にこれが適用されたらきっと倒産したでしょうね。適用されなくても危なかったのですから。しかし、この企業の論理にも大きな盲点がありました。優秀な弁護士をつけて法的な制裁を免れたとしても、社員そして消費者はその動向をメディアを通してしっかり見ているので、その感情はブランドから大きく離れてしまうのです。そこで失った社員・顧客という人間の信頼は法律の裁き以上にこのブランドを苦しめたのだと思います。この苦しみは今でも続いているでしょう。
 資本の論理というのは多くの場合正論に聞こえますが、そこで人間をモノのように考えてしまうと、このくらい大きなリスクにつながってしまうかもしれない、という恐ろしい話(企業にとっても消費者にとっても)です。もう古い話しですが、決して忘れるべきではない大事件だと思います。

一般社団法人日本ポジティブ心理学協会が復興支援チャリティー講演として「ポジティブ心理学界のインディ・ジョーンズ」ロバート・ディナーの講演をを6月26日に開催します。詳しくはこちらを
http://www.jppanetwork.org/charity.html

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