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2011-01

欧米人が沈黙するとき


欧米人が沈黙するとき

 異文化コミュニケーション関係の本は色々なものがすでに出版されていますが、この本は1980年に出版された古典です。その後、ITの革命的な進歩、日本人MBAの増加など、色々なことが起こり、異文化コミュニケーションのあり方も随分変わってきたようにも見えます。しかし、この本を読むと、基本的にはちっとも変わっていないなあ、と感じます。
 以下に挙げる私のサマリーを見て頂ければ納得してもらえると思いますが、日本人は色々なスキルを身につけて来ていますが、未だに欧米人、そして中国人との思考の違いに苦しんでいます。しかし、これこそグローバル・ビジネスに携わる醍醐味で、日本人の西洋化、あるいは欧米諸国に日本人のことを100%分ってもらえるなんてことはありえないし、なくていいのです。そんなことを分って建設的にビジネスを楽しむ能力こそが、今求められているグローバル人材の基本能力でしょう。
 もちろん、異文化コミュニケーションについての意見はそれぞれの人の個人的な経験に大きく影響されますので、本書の中にも「私の経験ではそうではなかった」と思うようなところはいくつかありましたが、それでもこの本に書かれていることはその他の新しい類書に比べてかなり普遍的なことを突いていると思います。
こんな感じです。

欧米(人)では:
・何の意見も持たない人は、人生哲学をもたない軽蔑に値する人間だと思われてしまう
・指名されるのを待っている学生などいない
・授業中に対立意見を大いに歓迎する
・討論を一種の知的ゲームと考える
・「Be original!」
・不満を言うだけではなく、解決のために即座に行動を起こそうという態度が尊重される
・個人の幸福の追求を、人生最大の目標としてかかげる(この態度は日本人には子供っぽく見える)
・仕事の依頼を受ける時、まず事の全貌をつかみ、時間をかけて質の高い仕事をしたがる
・ことばとことばの間に間がない(日本人はむしろ言葉と行動の間に間がない)
・物事は多数決で決め、会議では序列にかかわらずに率直に対立意見が出せ、事実をもとに徹底した議論をする。

日本人は:
・知りあって間もない人に、自分のほんとうの気持ちを伝えることにためらいを感じる
・グループの他の人々の意向が分らないうちは、軽々しく個人の意見を言うべきではないと考える
・他人の前で自分の能力を誇示することは失礼だと考える
・イエス・ノーの中間的答えが可能
・意見を持つことと、それを表現することは別の次元の問題ととらえる
・日本には個人の意見を強力に主張する人を、出しゃばりで身勝手な人とみなす価値観がある
・日本人は、個人と全体が一体となった形で自己の存在を証明する。欧米人はあくまで個人単位であり、自己主張によって、その存在を証明する。

・欧米人は外国人を甘やかされた子供のように扱うのは、無礼である、と感じる
・「根回し」とは、大木を移植する1~2年前に、その周囲を掘って側根の大きなものと主根とを残し、その他の根を切り髭毛を発生させ、移植を容易にすること。「根回し」は日本独特のものではない。しかし、日本のそれは「事前通告」であることが多いのに対し、欧米では「効果的な宣伝」であることが多い。

・日本人の「この間はどうも」という言葉は、何に対する感謝が見えず、欧米人には「こんなに感謝しているのだから」という心理的ゆすりともとられ、この人は勘定高い、と思われることがある。
・「すみません」と頭を下げると事がスムーズに運ぶのが日本だが、欧米では、「すみません」=有罪=責任を取る=罰金となりかねない
・「何もありませんが」という言葉はへりくだった態度を示しているが、謙譲の美徳どころか、謙虚の宣伝、あるいはお世辞の誘導ととられる
・日本人はウソに対して、欧米人ほど目くじらを立てない
・欧米人にとって「どうぞ、よろしく」という言葉は、誰に何を頼むのか、という不可欠な情報が抜けていると思われる。また、助け合いという精神は持っていてもそれは人の自由意思によって選択されるべきなので、押し付けられたと感じてしまう
・欧米では歳をとってもプライバシーの侵害についてはシビアである。一方日本の老人は大らかで、まるで天使のよう。生まれたての赤ん坊のように純真無垢でプライバシーなど超越しているように本人も思い、周囲もそう扱っている
・日本では、お世辞など、心にもないことを言葉巧みに語る一面を持っている。このような言葉の虚構性の楽しみ、というのは相手の感受性に対する信頼があるからこそ出来ることである。
・スピーチの内容は、当人しか言えないことを原則とする。さらにユーモアを加味する。

日本人へのよくある一言:
「結論を言ってください」
「ありがとう。で、お返事は?」
「イエスですか?ノーですか?」
「ありがとう。で、あなたのご意見は?」

日本人からのよくある一言:
「お茶をもう一杯如何ですか?」
「ところで、あなたの会社の社員は何人ですか?」
「私からはお返事できません。上司に聞いてみます」
「上司は今休暇中です」

・人は見ようと期待するものだけを見るのだから、文化的なタテマエの違いが現実の違いを決定付ける。その結果、「如才ないコメント」が「卑屈なおせっかい」となり「プライバシーの尊重」が「親しみをこめた関心の欠如」になってしまう

・従来の日本の英語教育は「部分から全体」であり、一文一文の和訳ができても、全体として何が書かれているか、著者が伝いたいメッセージは何か、がつかめないことが多い。

本書の中には日本人の英語教師による次のようなスピーチが掲載され、色んな国の参加者が率直な評価をしています。みなさんは、どう評価しますか?

「Please forgive my poor English. As I think I am the eldest, I’d like to say a few words for them. All we appreciate this seminar sincerely. We have nothing to say but thank you for your labor.
We teachers of English rarely have a chance to hear living English spoken by native speakers. It is obvious that participation to this seminar will bring remarkable progress to our teaching English.
Thank you so much again for your courteous education. 」

グーグルで必要なことはみんなソニーが教えてくれた


 ソニーで22年務めグーグル・ジャパンの社長も務めた著者がソニーへの想い、そしてグーグルというかつてのソニーのように元気な企業に対する敬意と共に、率直に自分の意見を書いた良書です。
 本書を読むと、大企業病にかかってしまったソニーは、まさに前回紹介した「ザッポス伝説」で書かれていた、コア・バリュー、カスタマー、フォーカス、社員の幸せ、そして「楽しみ」と言うものに対して本気でフォーカスすることが難しい企業になってしまったのだなということが分ります。
 著者のソニーに対する愛情は本書を読めば明らかなのですが、衰退期に入ってしまったソニーはもうこのまま消えるしかない、といった諦めの境地に至るまでには、本当にうんざりするような政治に巻き込まれたのでしょう。
著者はリーダーに求められる資質として、
1. 革命を起こす資質
2. 革命を察知してそれに最も早く追随できる資質
3. 革命が顕在化してから迅速にそれに追随できる資質
を挙げています。勿論、上の方から理想的な資質となります。そして、企業の成功を阻むのはリーダーの「革命が起き、世の中が完全に変わったにも関わらず依然過去の成功体験にこだわり変化を拒む態度」としています。
 過去の成功体験にこだわらずチャレンジし続ける、というのは「個を活かす企業」の中でも成功の必要条件とされていましたが、今の日本、この態度を持てないビジネスパーソンが余りに多いのではないかと思います。
 前回と同じ結論ですが、ザッポス社のように仲間とチャレンジを楽しみながら新しい成果を出し続ける企業をこれから増やしていかなければならないと思います。そうしないと日本の将来は暗い、どころか「そして誰もいなくなった」という状況になってしまうのではないでしょうか。本書を読んでそんなことを考えさせられました。

ザッポス伝説


 人に薦められて読んだのですが、評判通りとても面白い本でした。このコーナーは一応「スローリーダーの耽溺読書体験」ということになっているのですが、この本に関しては本当にあっという間に読んでしまいました。第一印象は何と言っても文体がいいですね。ビジネス書でありながら、偉そうなところがなく、純粋な視線を感じます。勿論これは翻訳書なので、原文がどんな感じなのかはまだ確認していませんが、きっと著者は素直な文章を書く人なのでしょう。
 内容的には、ポジティブ心理学の大御所セリグマンやチクセントミハイなどにも言及されていて、ポジティブ心理学的なマネジメントを実践したサクセス・ストーリーというようなことが言われています。しかし読んでみると、ポジティブ心理学を意識してビジネスをしてきた、というよりも、ザッポス社のアマゾンへの売却まで苦労をしながら経営をしてきたところ、後で考えると自分のやってきたことはポジティブ心理学の実践だったということを発見したという方が近いようです。
 創業後10年大きく成長し、アマゾンに12億ドルで売却されたザッポスですが、CEOのトニー・シェイはコア・バリュー、カスタマー・フォーカス、社員や取引先の幸せを重視した経営をしてきました。そのコア・バリューとは、
1. サービスを通して「ワオ!」という驚きの体験を届ける
2. 変化を受け入れ、変化を推進する
3. 楽しさとちょっと変なものを創造する
4. 冒険好きで、創造的で、オープンマインドであれ
5. 成長と学びを追求する
6. コミュニケーションにより、オープンで誠実な人間関係を築く
7. ポジティブなチームとファミリー精神を築く
8. より少ないものからより多くの成果を
9. 情熱と強い意志を持て
10. 謙虚であれ

 カスタマー・フォーカス、バリューリュー、社員の幸せ、これらを掲げる企業は少なくないと思いますが、ザッポスは本当に徹底しています。また、コア・バリューもユニークですね。特に3番などにはザッポスらしさが良く出ています。
 結局とんでもなく稼いだわけですが、トニー・シェイはお金よりも大切なものについてかなり初期から気付いています。例えばザッポスの前の会社をマイクロソフト売却した時には、大金を棒に振って、楽しみ・情熱を優先させたという逸話がありました。
 お金よりもビジョン、意味、崇高な目的を重視する辺りはポジティブ心理学と結び付けやすい部分ですが、個人的には本書で一貫している、ビジネスとは仲間と楽しむものだ、という考えが素晴らしいと思いました。抜群に地頭のよいシェイですが、信頼できる仲間と共に仕事をすることをとても重視し、そこからモチベーションを高めているようです。どこかロック・バンドを作って成功に向かって楽しみながら努力するような、そんな生き方に近いようにも感じました。
 楽しみと共に大変な苦労もして大きく育てたザッポスですが、こんな会社が日本にも出で来るといいですね。あと、アマゾンの子会社になってからも、「ビジョナリ―・カンパニー3」のように大企業病という「成功の復讐」にはかからず、常にクリエイティブであって欲しいと思います。

個を活かす企業


 今年に入り、あっという間に、新年、成人式、自分の誕生日、そして社団法人の設立(これについてはまた改めて報告します)など色々なイベントが過ぎ去って行きました。その間にブログを全くアップしなかったのには、忙しかったということともう一つ言い訳があります。この間にも紹介したい本、例えばホリエモンの著書などを読んだのですがが、年の初めに紹介するのに適したものとはどうしても思えず、アップを見送っていたのです。
 やはり新しい年の第一号は中身の濃いもので行こう、ということで、今回は「個を活かす企業」を紹介します。決して新しい本ではないし、あまり読みやすい本でもないのですが、改めて読んでみて個人的には結構多くの学びがありました。
 本書は、3M、マッキンゼー、インテル、花王などの企業の事例を使いながら、真に「個を活かす企業」となるには何をしなければならないかを詳細に説いています。私なりにまとめるとこんな感じでしょうか。

 まず、企業は「個人への信頼」をしなければならない。3Mの成功の背景には「個人の能力に対する、深くて誠実で揺るぎない信頼」があった。そして個人は「当事者意識を持つ」そして「強い自己規律を持つ」必要があり、組織には「失敗を許容するような支援的な文化・個人への真のエンパワーメント」が欠かせない。
 また、人間は基本的に好奇心に満ちた社会的動物で、人との交流やお互いに学び合うことを自然に求めているのだから、組織の中でもお互いに学び合い、プロとして助け合えるような環境を作る必要がある。

 「エクセレント・カンパニー3」で書かれたような「成功の復讐」から逃れるための組織行動には次の3つのキーがある。
1) ストレッチに挑戦する
2) 組織に柔軟性を持たせる
3) 伝統的な役割と組織に不均衡をもたらす
(「予算は気力を奪ってしまうが、ストレッチは活力を与えてくれる」。そして例えばお互いに補完し合う能力を持った2人のマネジャーによる管理には高い柔軟性と生産性がある。さらに、時代遅れとなった過去から離れ、社員一人一人が未知の将来に向けて飛び出すのに必要な刺激と支援を与えることがリーダーたちの中心的役割なのである。)

 社員の行動をむしばむのは、「服従」「コントロール」「制約」「契約」という古臭い環境であり、それに代わって「規律」「サポート」「ストレッチ」「信頼」という4つの要素が相互に作用し共に進化するような環境によって、変革のダイナミクスが生まれる。

 企業を表向きの組織構造の観点から理解することは不可能である。むしろ次の3つのプロセスのポートフォリオとして考えるべきである
1) 「企業プロセス」:現場のマネジャーが機会を求めて外を向く
2) 「統合プロセス」:企業内に分散する資源・競争力をビジネスに結び付ける
3) 「変革プロセス」:絶えず自分の信念や慣行に挑戦する

 企業は市場ではない。市場の観点から自社を捉えると市場原理の犠牲になる。効率性を多少なりとも犠牲にしなければ、イノベーションの持つダイナミックな有効性や価値創造を追求できない。

 決して目新しいことは書いていないのですが、良書だと思います。そして、「独自の能力を開花させるためには勇気と忍耐が必要だ」というくだりは、軽々しく「弱みには目を向けずに強みだけにフォーカスすれば、それだけで幸せになれる」などと言っている方々にはじっくりと読んでもらいたいところです。

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