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幸せを科学する:心理学からわかったこと


 本書は、ヴァージニア大学心理学部准教授でいらっしゃる大石さんによるもので、ポジティブ心理学上の幸福とは何か、また、経済、運、結婚、友人関係、性格など人生の中で本質的な課題と幸せとの関係が、様々な統計データをもとに解説されています。しかも、日本人として、アメリカ人など西洋人との違いについても留意しながら書いてくれているのが、翻訳書にはない付加価値です。この本1冊持っているだけでも、ポジティブ心理学で言われている幸せあるいはウェルビーイングなどの理論の背景にある重要なデータの多くがカバー出来るのではないでしょうか。
 統計データの解説が多い本書ですが、全体を通して著者の心理学データに対する敬意を感じる作品です。著者はあとがきで、この執筆を通して、哲学者や政治思想家が数千年にわたって議論してきた複雑な問題を実証可能にしたわけだから、「心理学って捨てたもんじゃない」と感じた、と書いていますが、そんな(自己啓発の教祖としてではなく)心理学者としての真摯な気持ちがよく伝わる内容です。
 データの分かりやすい紹介が魅力の本書ですので、全体をまとめるのは野暮かと思います。しかし、その中でも私が個人的に面白いなあと思った部分をいくつか挙げてみます。
 (ちなみに、本書はこの題名から連想されそうな某宗教団体とは全く関係ありません。)

○ (バスケットのフリースローの実験から)欧州系アメリカ人は「幸せ」や「楽しみ」を増すような選択をするが、アジア系アメリカ人は1つの課題をマスターするような選択をした。
○ アメリカでは、弱音を吐く友達は「お荷物」になりがちであり、弱音を吐かず、いつも元気で幸せでいる人が上手く生きている人であり友達がいのある人物なのである。そこで、できるだけ明るく、幸せにふるまわなければというプレッシャーも生まれる。日本では、逆にあまり元気すぎたり、幸せすぎたりすると友人から嫌な目に逢うことが多い。例えばおごらされるとか。
○ バスケットのスター、マジック・ジョンソンは91年にHIV感染を告白をし引退を決めたが、その後の健康管理と維持によってHIVは悪化せずコメンテーターを務めたり、映画に関わったり活躍をしている。このようにネガティブな出来ごとのウェルビーイングに及ばす影響はポジティブな出来事よりも広範囲にインパクトを及ばすが、その影響力はほとんどのケースで一時的であり、そこから立ち直って新たな活力のある人生を歩む人も多い。
○ 西洋では自己概念の中核として一貫性があり、一貫性の強い人が友人からも好かれる。一方儒教の影響の強い韓国では、相手の立場や上下関係を無視して一貫性を取る人は逆に未熟な人だと思われる。日本でもやはりこの柔軟性の方が評価されるのではないだろうか。
○ 他人との比較は幸福の毒である。(「競争心」の強い人は幸福になりにくい?)
○ パートナーとして望ましいのは現状に完全に満足しているような人。なぜなら現状に満足していない人はパートナーにも満足しないからだろうか。しかし、多くのスポーツ・ビジネス界の成功者は、絶対に現状に満足しないという態度が常にあり、そんな姿勢があったからこそ偉業を成し遂げるのであるが、彼らの私生活を見ると、必ずしも幸せな結婚生活を送ってきたとは言えない(ドナルド・トランプなど)。フロイトの言うように、愛と仕事が人間の2つの重要課題であり仕事では現状に満足せず、対人関係では現状に満足しようとする態度が望ましい。(しかしこれは難しい。)

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